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【閑話】秘仏に関する覚書

「もったいない」の心

浅草から長野へと移動する前に、ちょろっと……。

「なんでわざわざ彫った仏像を秘仏になんかするんだろう?」
という疑問は、仏像好きなら誰でも抱いたことがあるのではないでしょうか。
彫像なんだから。もともと見られる目的で作られたものなんだから。

でも、たとえば西国三十三所の観音様はほとんどが秘仏だし(ただいま絶賛公開中!)、四国八十八ヶ所だって実見できる仏像のほうが少ないわけで。
あなたの街の近所にある無名なお寺にしても、たぶん……境内に立ち寄ったり、軽く参詣したことはあったとしても、御本尊を拝んだことは……ないんじゃないですか?
村(町でもいいけど)の観音堂や薬師堂を見つけたら、こっそり中を覗いてみてください。たぶん、扉の閉まった厨子が見えるばかりで、御本尊の姿が拝めることのほうがまれだと思います。

でも、多くの参詣者は、そんなこと全然気にしてません。

特に「観音」といえば、誰でも具体的にその姿をイメージできるくらい、メジャーで安定したヴィジョンが共有されています。だから、「観音を奉っている」と聞けば、「ああ、お堂の中には観音像があるんだな」ということが誰にでもわかって、かつ、具体的にイメージできるはずなんです。
にも関わらず、「××観音」等と呼ばれる人気の観音霊場の参詣者たちは、お堂の前でガランガランとやって、お賽銭入れて、手を合わせて、そんでおみくじ引いて御朱印かなんかもらって、そのまま満足そうに帰っていきます。観音像を直接拝まずともなんの不満も持たない。お堂の中を覗こうとすらしません。
それじゃ、神社にお参りするのとなんにも変りませんよね。祈りのポーズが違うってだけで。

で、「そこ」こそが、「習合」という方法論を持つ日本人ならではの信仰心なわけです。
それがいいんです。

個人的には、「秘仏」の重要な成立要因として、日本人ならではの「もったいない」感があるのではないかと思っています。
ま、根っ子を辿れば「神仏習合←アニミズム」って話で、定説通りなんだけど。

こう、ね、俗っぽい例だと、美人の奥さんを娶った男がだ、友人かなんかに、
「へー、ホントに綺麗な奥さんだなー」
なんかいわれて、ジロジロ見られた場合、
「あんまりじろじろ見るな!」
「いいじゃないか、減るもんじゃなし」
「いいや、お前に見られると減る!」
みたいな会話が展開したります。

ベタかつ卑俗ですみません。

しかし、この「価値が減る」って感覚、あるんじゃないかなあ。たぶん日本人にしかない感覚。

まあ、この下世話な例の場合、独占欲といってしまえば元も子もないんですが、ただ、秘仏のもう一方での成立要因……密教の秘法でですね、歓喜天や准胝観音、荼枳尼天なんかが代表的ですが、秘法のマニュアルに「秘法本尊の他見を許さず」みたいなのってあるわけでしょ? この手は秘仏といっても、本尊に帰依している秘法の使い手(基本的にはその像を所有するお寺の住職さん)だけは拝むことができるわけです。
そこにねえ……いや、修業を積んだお坊さんに対してはなはだ失礼ではありますが、「自分だけが拝める」という独占欲的な悦びって……実は……ちょっとだけでも、あるんじゃないかな~、とか思うんですよね。俗人ならではのいやしい邪推かもしれませんけど。

ま、それはそれとして、「減る」に話を戻すと、実際問題として、「霊験が減る」というね。奉ってる側として、これは困りますよね。いろんな意味で。
いかな伝説の霊験仏でも、常に誰に対しても霊験をだだ漏れにさせてたら、やっぱ霊験が減る感じ……するでしょう? しますよね?
なんでそういう感じがするのかといえば、「彫像という物体に、魂が宿っている」というアニミスム的認識を、無意識のうちにみんなで共有しているからこそ、だと思うんですよ。

「宿っている」からこそ、おろそかに扱えば「抜けて」いってしまう感じがする。

偶像に対してこの感覚をあたりまえのように共有しているのは、やはり日本人だけでしょう。
だから、そういう観音様とか拝む時は、「(私なんかに霊験をわけていただいて)ああ、もったいないことだ」というわけです。

だからこそ、無闇に霊験を発散させず、厨子に込めて霊験エネルギーを蓄積させておくわけですね。
「使わない時はスイッチ切っとけ!」みたいな。
「ただいま充電中!」とか。

ひどい例だとお思いでしょうが、いや、でもね、この例の場合もエコとか電力の安定供給とかってのはしょせん理屈であって、各種エネルギーもやっぱり偉大な自然からわけていただくものですから。感覚的には、それこそ「もったいない」って感覚が本義だと思うんです。

もちろん、そういう感覚を完全に失ってしまった人も現代社会にはたくさんいて、そういう人にとっては、「お金がもったいない」以外に「もったいない」を説明できる理屈はないんでしょうけどね。
で、それが無宗教者の価値観なんだとしたら、「私は無宗教者です」と表明するのがなんだか恥ずかしく感じられる時代になってきたような気もします。日本でも。
だからといって、戦争のダイナモとしての本質を抱える一神教なんてもんはツバ吐きたいほど大大大嫌いだし、特定のナンカに属する気もないんですけどね。

いやあ、時代は「アニミスト」かなー!
大自然に対する敬意と尊重が生き物としての基本でしょう、やっぱ。

1500年遅れてるよね、今のニッポンって!



※090531:ほんのちょっとだけ加筆しました。
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非公開コメント

もったいないのでしょうか?

毎回、卓見の連続で、勉強になることばかりです。

ただ今回の、仏像はじろじろ見られると、霊験が消えるというのは、仏教説話なんかでも、あまり見かけない概念ですよね。
むしろ仏様は、だいたいの場合、自意識過剰で、熱心にじろじろ眺められたほうが(日夜、直接的に拝まれたほうが)、がんばるようで。

ここは単純に、
神様は見えないけど、仏様は見える
という、古来のふたつの概念が、まさに習合しての、秘仏とは考えられないでしょうか?

富士山の神様である「このはなさくやひめ」なんてのは、実際には姿形はないわけですよね。莫大な自然エネルギーの擬人化だから。
それと一緒で、「観音様ってえのは、ああいうきらびやかなお姿をしているけど、本当は目に見えない宇宙のパワーなんだよ、仏像ってのは、世を忍ぶ仮の姿なんだよ、たまたま、ああいうお姿で、我々の前に出現なさるだけなんだよ」という概念を、わかりやすい形で(それこそ「目に見える形」で)表現すると、普段は人に見せられない「秘仏」になるんじゃないですかね。

まあ、視点がちょっと違うだけで、「もったいない」という概念と、あまり変わらないか。

ありがとうございます

お褒めの言葉恐縮です&初コメントの口火を切っていただいて本当に感謝です。

なるほど。さくやちゃんを例に出すと、すごくしっくり来ますね。でも、「すごい美人」って聞くと、神様でもビジョンがほしくなったりしますけど。
裏を返せば、弁天様や吉祥天でほんとに美人な像って滅多になかったりする現実もあるので、だったら秘仏のほうが……ってのは、全然話が違いました。すみません。

「霊験が減る」に関しては、私の表現力不足ですかねえ……。

本文中の「下世話な例」に引き寄せると、「美人は3日見れば飽きる」みたいなことわざって、日本人意外にも理解できるんだろうか、とか。夫婦が長年一緒に暮らしているとセックスレスになっていく率が日本人は飛びぬけて高いとか。

うーん……これもなんか違いますね(笑)。

出し惜しみ感ってのもちょっと違うし……。

あ、こういう例はどうでしょう?

特別な思い入れがある大好きな曲で、特別な感情を呼び起こしてくれるその力が、
毎日聴いていると消えてしまいそうな気がして、極力聴き控えるとか。
私はあるんですが、そういうのってないですかねえ。
物質的消費とはなんの関係もなく、マジカルなパワーが消費されていってしまうような。
それだけに、そのパワーを身に受けるときはいっそう格別「ありがたい」という。

……ダメですか?

今後も期待

美人のたとえでいえば、人に見られるほどきれいになる、とも言うし……って、どんどん主旨を逸脱してしまいますね。

確かに、しょっちゅう見られると、安っぽい感じがするってえのは、わかります。
でも、いいものは、しょっちゅう見られても、パワーが落ちる気もしないんだよなあ。
とすると、秘仏ってのは実は……。いやいや。

いずれにせよ、なんで秘仏なのか、という質問は、シンプルなようで、日本文化の根源に迫るような、なかなか深い意味合いを持っているみたいですね。
面白いです。

そうなんです

「秘仏」の概念は、日本人の信仰スタイルを象徴する面があるように思うのです。

きれいにまとめてくださったので、ここで落としておきたいのですが、もうひとつだけ。

>いいものは、しょっちゅう見られても、パワーが落ちる気もしないんだよなあ。

同意もするんだけど、「でも…」って気持ちも同時にあります。
今回の阿修羅くんなんかはあれだけ晒されても負けない気はするんですけど、
文中でも出した救世観音なんかはどうでしょう。
高村光太郎が「あれは隠しとかなきゃいかん!」と書いてるのを読んで、
「ああ、そう思ってるのはオレだけじゃなかったんだ」とちょっと安心したんだけどなあ。

ま、感じ方は人それぞれとしか言いようがないんですが……
アンケート取ってみたい気もちょっとします(笑)。
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Author:LooseFrog
基本的に怠惰で、社会人として問題の多い中年男です。
でも、興味の対象には嬉々として食いつきます。

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