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御子神十三柱の再確認 その2

十三柱のバリエーション総覧

『土俗より見た信濃小社考』という本がある。在野の研究者である小口伊乙という人の著作だが、この書の中の「十五社明神」という項目が、おそらくは諏訪の十五社神社に関するまとまった考察のテキストとしては唯一のものではないかと思われる(むろん浅学ゆえ、他のテキストがあるようなら是非ともご教示願いたい)。
郷土史家らしく、それなりに独創的な持論を持つ人なので扱いに注意を要する面はあるが、タイトル通りに民俗学的視点でのフィールドワーク記録として見れば、第一級の資料といえる。現地をひとつひとつ訪ね、関係者の話もたんねんに聞き取っている。貴重である。
まったく……たかだか30~40年ばかり前の踏査記録が極めて貴重に感じられるのが、まさに民俗学たるところなのだが。

さて、この「十五社明神」の項目から、各社氏子への聞き取りを前提とした十三柱のバリエーションを拾い出すことができる。

【岡屋十五社】
彦神別命、出早雄命、意岐萩命、諏訪若彦命、守達神、池生神、蓼科神、片倉辺神、大県神、内県神、外県神、八杵命、高杜神

【新倉十五社】
伊豆速雄命、多津若姫命、多留姫命、建志名命、妻科姫命、池主命、都麻屋美豆姫命、八杵命、洲羽若彦命、御倉辺命、興波岐命、別水彦命、高杜命

岡谷の他の2社についても著者は確認しているようなのだが、残念ながらそこまでは具体的に記述されていない。ただ、論の展開上、「2社とも7番目に蓼科神がいる」旨のみ、明記されていた。
あー……今、改めて読んでいて気付いたのだが、茅野市宮川に、私の把握していない十五社がもう1社、存在するようである。これは追って確認したい。
(「神宮寺の床屋さん」なら即座に教えてくれそうな気がする…と、独り言)

それから、『豊平村誌』には古田十五社における十三柱が記されている。

【古田十五社】
洲羽若彦、彦神別、片倉辺、八杵、高杜、伊豆速雄、建志名、興波岐、池生、恵奈武耳、妻科媛、別水彦、守達

これは走り書きのメモから起こしたため、「命」と「神」の区別を失念してしまった。が、順序はあっているはずだ。なんにせよ、追って確認したら書き直しておくこととする。

以上、オフィシャルのラインナップを加えると、4つのバリエーションを拾うことができた。文字表記の違いについては江戸時代以前の感覚では取るに足らないことだが、「命」と「神」の尊称の使い分けに齟齬が見られる点は興味深い。それ以前に、想像を遥かに超えるだけの大きな違いに改めて驚かされた。

また、宮坂喜十『諏訪大神の信仰』によれば、「御子は史書によって十三柱・十九柱・二十一柱などと諸説がある。」とのことなのだが、この「諸説」の載った「史書」を個人的に未だ見出せていないのがなんとももどかしい。
それが最初に挙げた問題点の3と4なわけだが……かように文献に弱いのである。ま、おそらくは、既知の文献の未読部分にあっさり載っていたりするのではないかと思うのだが。

ともあれ、十三柱の内容が一定しない以上、「十三柱」というくくりとは無関係に、知りうる限りの全諏訪御子神のリストを挙げておく必要性も感じるわけだ。たとえばの話、「オフィシャルにいないから高杜と守達は無視ね」というわけには、まったくいかないのである。

さてそこで。以前にも触れたことがあるが、前宮の境内摂社「若御子社」には、二十二柱の神々が合祀されている。以下は『平成祭礼データ』によるが……実は持っていない。これはなんとしても手に入れておきたいのだが。
というわけで、今回は「神奈備/kam-navi」さんのお世話になった。

【前宮若御子社】
建御名方彦神別命、伊豆早雄命、妻科比賣命、守達神、池生神、須波若彦神、片倉邊命、蓼科神、八杵命、内縣神、外縣神、大縣神、惠奈武耳命、高杜神、意岐萩命、妻岐萩命、都麻耶美豆比賣命、奧津石建神、多都若比賣神、垂比賣神、竟富角神、大橡神

続いて、出典不明ながら、先述『諏訪大神の信仰』からは、以上の二十二柱からさえも漏れている神の名がいくつか拾い出せる。

【『諏訪大神の信仰』より、その他の御子神】
八重隈根命、殖春神、雛若姫命

そして最後に、現時点で私が認識している範囲内でもっとも詳細な御子神データを参照することにしよう。飯塚久敏(江戸末期の国学者)の「諏訪旧蹟誌」に載っている「神系略図」である。
著者がいうには、これは下社の系図から引用しているとのこと。現存する武居祝系図の神代部分は相当にいい加減なもので似ても似つかないので、つまり、江戸末期の段階では下社に神代を含む詳細な系図が残されていた、ということになる。上社の系図は、有員以前には最初から触れたがらないため、神代の系図資料は逆に貧弱である。ゆえに、この飯塚久敏が参照した下社系図は非常に貴重な資料であり、また、今なお出現の可能性を期待できる古文書なのではないだろうか。

さて、その内容だが、まず最初に建御名方の御子神として、前宮若御子社の二十二柱に非常に近いラインナップが挙げられている。よって、江戸末期~明治期にかけ、この資料を参照して若神子社の祭神を定めた可能性もいちおう考えられる。が、表記のみならず一致しない点がいくつか拾い出せるので、より古い別の典拠がある可能性のほうが高いだろう。
この差異についても、ひと通り洗い出しておくことにしよう。

まず、彦神別から意岐萩までの十五柱については、順序も含めて一致している。ただ、表記の違いはいくつかある。以下、比較の順序は、前者が「若御子社祭神」、後者が「諏訪旧蹟誌神系略図」とする。
・建御名方彦神別命 → 建御名方彦神別命 亦名彦神別命
・伊豆早雄命 → 出早雄命 亦名出早神
・妻科比賣命 → 妻科姫命
・池生神 → 池生命
・須波若彦神 → 須波若彦命
・「旧蹟誌」には、内縣神、外縣神、大縣神の後に「以上三神流鏑馬之祖神也」と注記

十六柱めからは、神名そのものに齟齬が出てくる。

・「旧蹟誌」には妻岐萩命が出てこない。代わりに、若御子社にはいない別水彦神が入る。
・都麻耶美豆比賣命 → 妻屋美豆姫神
・多都若比賣神 → 鶴若姫神 (※同神かどうかは微妙なところ)
・垂比賣神 → 垂姫神

以上である。

さて、続く「旧蹟誌」の記述だが、以降は御子神の御子神、すなわち建御名方の孫神が挙げられてゆく。そこまではとても追いきれないのだが……中には「馬背神」など、明らかに重要な神が何柱か含まれているので、これもとりあえずのリスト化だけはしておくことにしよう。後の自分のためにも。

【彦神別命の御子神】
庭津女神、馬背神、八須良雄神、武彦根神、知弩神、佐那都良姫神

【出速雄命(表記、旧蹟誌のママ)の御子神】
八縣宿禰命(亦名佐和惠多良六老彦神)、出速姫神(亦名會津比賣命)、草奈井姫神、可毛神、若木姫神

【守達神の御子神】
高志奈男神、美都玉姫神

【池生命の御子神】
神坂雄神、愛遲子神、池若御子神、底多久神、高石姫神

【八杵命の御子神】
久留須神、比良父神、八立神、倉稲主神

【恵奈武耳命の御子神】
宇惠春神、茨田神、菅根神

以上である。
余談もいいところだが、美都玉姫神の名を見ると、反射的に草間彌生を想起してしまうのは私だけだろうか。つーかそれ以前に、美都玉姫神の名を日常的に目にするような機会があるのは私だけだろうか。という話なのだが。

最後に、諏訪御子神に類する存在として、もう1カテゴリーだけ追加しておこう。
各神の位置づけや注記も整理して添えておく。

【神長官系図における御子神的な神々】
・守宅神(洩矢神の御子。神長官系図では、その妹を多留姫命としている)
・千鹿頭神(守宅神の御子)
・兒玉彦命(片倉邊命の御子。美都多麻比賣神を娶って千鹿頭の跡を継いだとする)
・八櫛神(兒玉彦命の御子。すなわち、建御名方のひ孫)

以下、もう数代にわたって神様っぽい名前が続くが、とりあえずここまでにしておこう。

リストはこれですべてである。ふう。

ここまで見てくると、十三というのがなんらかの意味での吉数であり、そこに当てはめているだけの話であろうことが明白になってくる。とはいえ、公式見解としての御子神十三柱の定義は、「御子神の中でも、国土開発に特に功のあった神々」ということになっている。そこで、重要度によってランク分けがなされているという事実を見逃すわけにはいかないだろう。国土開発云々を歴史的解釈で言い換えるなら、「諏訪祭政体への貢献度」ということになる。そこは当然、評価する者の立場、所属、出自等々によって変わってくるわけで、つまり十三柱のバリエーションから、神々の出自をその痕跡だけでも辿ることのできる筋道が、微かながらも見えてくるわけである。

ともあれ、十三柱という枠組みの意味が曖昧化してしまった以上、その「重要度」の比較によって、御子神たちをまた違った視点から分類してみる必要があるように思う。でないと、とっ散らかりすぎていて、なにがなんだか全然わからないからである。

というわけで、この項はもう1回だけ引っ張っておくことにしよう。
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