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そこにあるはずのない白鳳仏 序章つづき

諏訪は本当に仏教不毛の地なのか?(2)

さて、続きです。

……いきなり余談ですが、本文下に勝手に入る"Ads by Google"のアドで、さっそく三面大黒天チャームの販売サイトが入ってきましたね(笑)。予想通りというか、期待通りというか……ちょっとうれしい。

ええと、諏訪固有の歴史観、神宮寺のスルーっぷりという話でしたね。

つまり、早い話が、諏訪は仏教不遇の地なのです。
なにしろ諏訪明神!
……いや、ホントは「明神」って時点で仏教が習合してるんですけどね。

ともあれ、なんだろう、ある種の純粋主義と言いましょうか、諏訪神本位主義と言いましょうか、まず第一に、仏教の伝来が異常に遅かった、と。そして遥か時を経て、神仏分離→国家神道の思想統制によってその痕跡は駆逐され、とにかく現状、仏教というのは脇役に追いやられているわけです。ここ、諏訪では。

いや、お寺ならそれなりにたくさんあります。そして実際にみんながお葬式をどう出しているのかといえば、圧倒的に仏教が主流です。それこそ、神宮寺もしくはその系列寺院の中世~近世における圧倒的な勢力を示す証拠にほかならないんですが、そういう受け取られ方はしていないんですね。感覚としては。
「葬式仏教」と言いますが、要するに葬式請負システムとしてしか受け入れられていない面がある。どこのお寺も、参詣してみれば実際に近世以降の匂いが濃厚に漂っていますし、つまり、「諏訪本来の歴史には関わっていない」という認識なのです。

ま、一般の人々は当然そこまで意識的ではありませんが、郷土史家もしくは郷土史好きな人たちの共通認識として、「そういう感じ」なわけです。そして、それこそが「諏訪の独自性」であり、誇りなわけです。
……まあ、国家神道の思想統制の名残がいまだに拭い切れていないという事情があるのかないのか、そこはなんとも言えませんが、少なくとも、諏訪大社そのものに関して言えば、神社本庁の方針に極めて忠実な運営をしていて、つい1世紀前まで神宮寺があったとか、本当の主神はミシャグジだとか、そのへんは忘れたフリをしているように見えます。

現実問題、諏訪に平安後期より遡る仏教遺物は存在しません。……いや、ずっと、そう思われてきたのです。少なくとも文献上の証拠はありません。つい数十年前までは、岡谷市川岸の観音堂にある聖観音像、これが平安末期とされ、諏訪最古の仏像とされていました(あ、ちなみに、諏訪の盆地を出れば、長野県にも平安期の仏像がゴロゴロしています。北信に行けば奈良時代初期の金銅仏も、由来伝来はともかく、いくつか存在しています。まあなにしろ善光寺の秘仏本尊もあるわけですし)。

この観音にはもっともらしい伝承がありまして、なんでも、塩尻峠の向こう、重文平安仏の宝庫である牛伏寺の御本尊と同じ木材を使っていると。この口碑ゆえに、平安仏と判断されていた面もあるのかもしれません。
なんにしろ、一見してそれとわかる典型的地方作なので、制作年代の比定は簡単ではなく、最近では室町時代の作というのが岡谷市教育委員会の見解となっているようです。
しかし……この見解自体が、諏訪的先入観の影響を受けていないと言い切れるのかどうか……そのうち、この仏像も自分の目で確かめに行ってみますが。

しかし。
正直な話、私自身が、この諏訪固有の先入観に毒されている面が確かにありました。

たとえば、奈良時代の墳墓が発掘された。それが火葬墓であったと。火葬墓ということは、その時点で仏教の影響が入っているらしいぞ、と。そういう記事をちらりと見かけますわな。
そうすっとですね、「まー、弥生文化なんかと同じで、ちょっとくらい影響は入ってくるだろうけど、仏教ってことはねーよなー(わらい)」てな感じで、スルーしてしまうんですね。無意識のうちに。ニュートラル史観の持主たることを自負する私にしてからが、そういう「諏訪バイアス」を自分の中に感じてしまうのですね。

やあ、困ったもんです。

さて、ところで。
下社神宮寺に並々ならぬ思い入れを持つ私が、在りし日の下社神宮寺を偲ぶよすがとして、ま、旧跡巡りもあるんですが、もうひとつ、廃仏毀釈時に神宮寺の什物を引き取ってくれた近在のお寺を訪ねる、という手段があるわけです。
上社は上社でいくつもの寺が仏像等を引き継いでいますが、下社の場合、神宮寺の寺外に縁の深い寺院があまり多くなかったという事情があり、その名残を偲べるお寺はほとんど2つに限定されています。
それが、ともに岡谷市に現存する、照光寺と、平福寺です。(※注:090718追加)

前者は下社神宮寺唯一の末寺として、後者は金刺氏の氏寺・三精寺に縁が深かったということで、それぞれ神宮寺絡みの仏像や什物が相当数残されています。平福寺は平福寺で、胸を張って重文級!と言い張れる旧三精寺本尊(現状、県宝。たぶん、湛慶時代かその直後くらいの慶派仏師の作で、個人的には「諏訪地方最高の仏像」に推します)を擁し、とても素敵なお寺なのですが、やはり照光寺は寺格の高さで圧倒的です。なにしろこのお寺の長老(前住職)は、密教研究、空海研究の国際レベルでの第一人者である、宮坂宥勝師なのです。
ていうか、真言宗に興味を持つ人でこの名前を知らなければモグリもいいところですね。智山派の管長を二期に渡って務めたお方ですから。猊下ですよ、猊下!
ちなみに……現住職も、チベット仏教の研究者として中沢新一も一目置くような、ものすごいお方です。

と、まあ、それはいいのですが、とにもかくにも、下社神宮寺の旧本尊はここにあるのです。

下諏訪神社本地仏千手観音!
武田勝頼の念持仏!
60年に一度御開帳の秘仏!

一昨年、特別開帳があったのですが……私は見逃しました(痛恨!)。写真を見る限り、院派系列の端正な小像で、保存も最高。切金紋様(たぶん)も美しい優品です。……ということは、鎌倉初期あたりの造像が想定されます。

実際に参詣してみても、なかなかに立派なお寺です。境内や雰囲気からは近世臭しかしてきませんが、まあ、例によって何度も何度も燃えてるらしいんで、中世以前の姿を偲ぶことが難しいのは仕方のないところでしょう。

てなわけで、昨年私は、久々にふらりとこのお寺に立ち寄ってみたのですね。

そこで、エライもんを見てしまったのです。

skj_ysd01.jpg

ここは、照光寺、薬師堂。
通称、お観音さま。……というのは、下社本地仏を脇本尊として奉っているお堂だからなのですが。

えーと……。

skj_ykd_ks.jpg

「本尊秘仏薬師如来(白鳳三年銘)。」

はあっ!?

諏訪信仰史の常識を豪快にちゃぶ台返す、この力強い解説。
見た通り、かなり新しい看板で、少なくとも私には見おぼえがありません。

おいおいおいおい……。

私は諏訪関係の郷土史資料をそれなりに見直してみました。
しかし……この件について書かれた資料は、いっさい!見当たらないのです。

まあ……普通だったら、眉に唾して終わりです。
あまりにも突飛!
なにしろ、400~500年からの空白を一気に飛び越えるわけですからね。
なんぼなんでも飛距離ありすぎです。

しかし、このお寺の住職さんは、並みのお寺の住職さんとはわけが違う。
仏教美術が専門ではないとはいえ、学者さんでもあるわけですから(長老は名古屋大学名誉教授)。
安易に無視なんてできるわけがないんです。
にも関わらず、地元の資料では無視されている……。

ちなみに、岡谷市の文化財指定リストにも入ってません。このお寺は、市内でもっとも指定文化財の多いポイントなんですけどね。
ま、秘仏ってことだからしょうがないんでしょうけど……。

さて。
どうしたものでしょうか。

次回に続きます!

090718:少々追記訂正、と同時に注を追加。
090722:追加した注記に恥ずかしい間違いがあったので、以下に訂正とお詫び。



注:090718追加)
なんか忘れてると思ったら、もうひとつ、同じく岡谷市の真秀寺がありました。といっても、これは無住の小寺。かつては下社神宮寺本坊の遺構を移築して本堂にしていたそうですが、現存しません。現存する本尊不動明王像は、本坊由来のものらしいです。
また、下諏訪町の慈雲寺も、金刺氏が一山一寧に依頼して創建したという諏訪信仰的に由緒正しいお寺なのですが、廃仏毀釈時にはすでに曹洞宗、すなわち禅寺になっており、神宮寺とは無関係になっていたものと思われます。禅寺にも関わらず、秋宮本地仏と同じ(そして基本的に密教仏である)千手観音を本尊にしているあたりが、わずかにルーツを偲ばせてくれます。

090722:訂正
慈雲寺について。
あー、一山一寧開山ですから、慈雲寺は最初から禅寺ってことですよね。鎌倉中央に直結していた金刺氏が、最新流行の禅寺を諏訪にも!ってことだったんでしょう。神宮寺や三精寺との関係や位置づけはイマイチわかりませんが、なんか「別扱い」だったのだろう、としか言えません。
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