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【諏訪信仰覚書】守屋山考察

なぜ守屋山が神体山なのか?

守屋山。言わずと知れた諏訪大社上社の神体山です。三輪山や浅間神社同様の「本殿を持たない古信仰の形」というのも、この山あってこその話です。
しかし私は、昔から……それこそ少年時代から引っかかっていたのです。

守屋山って、そんな、神体山になるほど印象的な山かぁ?

そうなのです。神体山というのは、だいたい印象的な姿形をしています。先の「本殿持たないシリーズ」で例に挙げた三輪山、富士山は言うに及ばず、それと知られた火山にせよ、宇佐の御許山にせよ、ある程度は独立峰的な目立ち方をしています。そうでなくても、戸隠や妙義山のような顕著な岩山とか、山容自体が印象的なのが当然というものです。

その点、守屋山ははっきりいって地味です。
諏訪盆地というのは、急峻かつ奥深い山稜が諏訪湖を取り囲む地形になっているのですが、北は諏訪湖から流れ出る唯一の川である天竜川の伊那谷、南は八ヶ岳の広大な裾野へと繋がる諏訪市から茅野市にかけての平地、この2ヶ所でのみ山稜が途切れています。つまり、諏訪湖を取り囲む山稜は、東側と西側に2分できるわけです。

八ヶ岳から続く、霧ヶ峰~鷲ヶ峰~鉢伏山~美ヶ原といった高原性の山々の前哨山地である東側山稜。
南アルプス(赤石山脈)の北端に当たり、諏訪湖が天竜川へと流れ出る釜口で途絶える西側山稜。

守屋山は、諏訪湖に面する西側山稜がもっとも高く、厚くなっている箇所に当たります。

なんですが……あくまでも山稜の一部の高まりであるからして、独立峰としての存在感はありません。それでも、諏訪湖対岸や、諏訪市側の対斜面から見上げる守屋山には圧倒的な量感がありますし、お膝元の茅野市市街部から見上げると、山頂部(正確には、地図上の守屋山山頂である西峰は、間近からは見えません)もなかなか迫力があります。
それでも、ね。たとえば他所から来た観光客が、「あの山はなんて山?」と聞きたくなるほどの存在感と独立性はないのです。
逆にいえば、そういうお客さんに「あれが守屋山だよ」と教えたところで、「ん? どれが?」といった調子で、まったく要領を得ないと思います。

ここで、もっとも全体像を把握しやすい、対岸からの守屋山の写真を見ていただきましょう。

mori0101.jpg

さあ、守屋山はどれでしょう?

……ね? ピンと来ないでしょ?

答えはですね、アンテナ塔が立っている右側、山稜ひとつ奥まった、画像中もっとも高い緩やかな山稜、その右端に、地図上、守屋山の山頂とされる三角点があるのです。

「ふーん…?」としか言いようがないですよね。ちなみに、この山稜の微妙なピーク群を指して「守屋三山」と称することもあります。
「三山」ねえ。ま、山岳修験の三山信仰になぞらえた表現なんでしょうけど……そんな大げさなもんじゃないですよね、見るからに。

そして、一番左(東)の山頂には、石祠があります。その下に、なにやら紋様めいたものが刻まれた怪しい石碑もあります。そして景色は最高です。眼下に諏訪湖を見下ろし、周囲には、八ヶ岳に加えて、南・中央・北アルプスのすべてを視界に収める大パノラマ。

ただ、ね。よく誤解されるんですが、この石祠は諏訪大社上社の奥宮でもなんでもありません。反対側、伊那谷の麓にある「物部守屋神社」の奥宮なのです(※注1)。
諏訪大社上社の神体山は、あくまでも「背後にある山」であって、諏訪大社の立場としても、「守屋山が神体山」という特定はしていません。そもそも頂上付近一帯は禁足地でもなんでもありませんし(山腹は今でも厳格な禁足地)。
強いていえば、江戸中期と推定される「諏訪社遊楽図屏風」図中、守屋山中に「もりや大神」と示された祠が見えますが、もちろん場所は特定できませんし、今の山頂の石祠に当たるものかどうかも不明。そもそも遊楽図であって諏訪社オフィシャルなものではありませんから、現代人がそうであるように、物部守屋神社の奥社を民間信仰的に諏訪社に関連付けて解釈してしまっている可能性も大でしょう。

そもそも、神体山は、その山麓に直接の影響を及ぼす山でなければなりません。里に直接面した山稜の向こう、さらに奥の山を神体山とすることはまずないといっていいでしょう。それが許されるのであれば、諏訪盆地には他に相応しい山がいくらでもあるのです。少なくとも、守屋山のほんのちょっと南に位置する入笠山、釜無山だけを見ても、人里との直接の連続性は大前提として(ただし、諏訪湖岸からは離れる)、印象的な山容、標高、ともに守屋山を遥かにしのいでいるのです。

このあたりについては、「諏訪大社と御柱」の運営者の方も同見解で、勇気づけられます(→ここの「神体山・守屋山」)。

しかし、さらに加えて言いたいのは、本宮でもいいですが、特に前宮を背にして立った時。これは実際にその場に立ってもらわないとわからないかもしれませんが、対面する八ヶ岳の偉容が圧倒的で、しかもその雄大な裾野が次第に斜度を落とし、足もとの平地まで直接続いてきている。そこには、八ヶ岳を水源とする無数の河川が下ってきており、それが宮川、上川となり、上社の足下を抜けて諏訪湖に流れ込んでいるのです。
どう考えたって、こっち(八ヶ岳)を神体山とするのが筋というものではないでしょうか?

(※えー、ここには、後から相応しい画像を入れたいと思ってます)

じっさい、上社の古信仰が八ヶ岳を拝んでいる気配は残されています。
まず、下社同様に奥宮/山宮とする御射山社が、前宮の遥か南南東、八ヶ岳の裾野ど真ん中に位置する御射山神戸にあること。
そして、神聖なる御柱の御用材を伐り出す社有林が、御小屋山にあること。
付け加えるなら、「ひとまとめで独立峰」といった堂々たる山様を呈する八ヶ岳連峰中で、諏訪側からもっとも大きく、もっとも高く、もっとも厳く、顕著な姿を見せるのは阿弥陀岳であって、この御小屋山は、阿弥陀岳からまっすぐ手前へとくだってくる長大な尾根の途中にあります。
御小屋山には巨大な石祠もあり、「本来はここが上社御射山では?」という説もあります。

ま、その真偽は置いておくとしても、ここまで説明すれば、「なんで守屋山が神体山なの?」という私の疑問もご理解いただけるのではないでしょうか(※注2)。

いや、肝心なことを忘れてましたね。
守屋山固有の、信仰的性格です。

まず、水分(みくまり)の山としての信仰の問題。
確かに、前宮脇を急流で流れ落ちる水眼川は印象的ですが……はっきりいって、盆地を取り囲む山稜から無数に流れ出ている小川のひとつでしかありません。ていうか、この件はもう、説明が終わってましたね。水分の神だったら、八ヶ岳のほうがずっと重要な上に印象的なのです。

ついでなので諏訪湖北岸における例も見てみましょう。北岸では、その沖積地を形成した砥川、承知川、横河川という3本の川が深い谷を持つ代表的な河川なのですが、いずれも沖積地へと流れ出るまさにその場所に、春宮、秋宮、出早雄小萩神社(これも重要な古社)がそれぞれ陣取っています。
これを上社に当てはめるなら、やはり重要なのは上川、宮川(諏訪湖がもっと大きかった往古にには、この2本の川はほとんど一緒みたいなものだったと考えられます)。そして
その水源となる川は、やっぱり八ヶ岳以外にあり得ないのです。

次に、雨乞い山としての信仰。
これは結構な説得力があります。諏訪盆地の農民たちの間には、古くから「守屋山に雲がかかると雨が降る」という伝承があり、気象予報の拠り所とされてきました。
じっさい私も、そんな信仰のことも、守屋山の名もまったく知らない子供のころから、誰に聞くともなくそのことを感じていました。
これはなんの不思議もないことで、諏訪盆地から見て真南、南北に連なる巨大な壁である南アルプスに、南西方向から吹いてくる季節風が当たり、北上してくるわけですから、守屋山が気候変化の気配が最初に現れる場所であることは、まったくの合理なのです。

これは重要かつ決定的な信仰の根拠となり得ます。しかし、たったそれだけが、守屋山の信仰の拠り所なのでしょうか? それではどうにも納得がいきません。八ヶ岳という山の圧倒的な魅力と威容、そして実際の恵みをもたらす神体山候補がありながら、強いて地味な守屋山を選ぶだけの理由とは考えられません。
もしくは、先に述べたように八ヶ岳信仰が古態だったと仮定するならば、そちらを半ば捨ててまで、守屋山へと信仰を移すだけの理由がなければならなかったはずなのです。

守屋山には、それ以上にどんな意味があるのか?
考えてみました。
次回に続きます。



注1)
とてつもなく怪しい場所にある怪しい神社で、諏訪信仰を考える上でも避けては通れません。当ブログでもそのうち触れるかもしれませんが……ちょっと迂闊に手を出せない感じですね。ただ、現時点での私の立場を、最低限表明しておくことにします。
・物部守屋≒洩矢神説は、やっぱりトンデモだと思ってます。
・しかし、物部氏もしくはその支族なりが、古代において諏訪信仰となんらかの関わりを持っていた可能性については、これをまったく否定しません。

注2)
カン違いしてほしくないのですが、私は、郷土の山としての守屋山を愛しています。山頂からの比類ない眺望、豊かな山態は、本当に素晴らしいものです。
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